小沢一郎氏の軍事知識については相当なものだ
軍事問題でこんな面白い記事を見付けました。
軍事専門家と言われる政治家は、ほとんど冷戦構造で出来た、日米軍事同盟から思考が停止してしまっていると思います。この事を考えれば、普天間の問題ももっと簡単に解決できる様な気がします。
軍事専門家の石波議員も、旧来からの主張をもっともらしく行っていますが、その言葉はただ利権と密接に絡んだ事だけの様に思います。下記に記事の転載いたしますが、あまり知らされていない事でもっともらしく評論する人々を信用できなくなりました。特に政治家の軍事に対する言葉はもっとも信用できない様な気がします。
小沢一郎氏と周辺の金の問題には疑問を感じてはきたものの、それとは別に同氏は軍事知識については相当なものだ、と評価せざるをえない。 同氏は民主党代表だった昨年2月24日、記者団に「米海軍の第7艦隊だけで、米国の極東でのプレゼンス(存在)は十分だ」と語った。自民党は、安全保障問題に関する民主党の信頼性を低下させる好機と見た様子で、この発言に猛然と噛みついた。 当時の麻生太郎首相は「同盟国である米国が海軍だけ、あとは空軍も海兵隊も陸軍もいらないとは、防衛に少なからぬ知識のある人はそういう発言をなさらないのではないか」と語った。他の自民党幹部たちも「非現実的」「日米関係を危うくする」などと非難した。だが、自衛隊の将官や軍事評論家達の間では「小沢さんの言う通りじゃないか」との声が多く聞かれた。麻生前首相らの小沢発言への批判は在日米軍の実態や軍事再編をよく知らず、漠然とした「日本は米軍に守られている」との感覚から出たと思われる。 在日米空軍は沖縄の嘉手納にF15戦闘機48機、青森県三沢にF16戦闘機40機を配備していることになっているが、これらは中東などに交代で派遣され、実数はさらに少ないことが多い。日本の防空は1959年以来すでに50年以上、航空自衛隊(F15が203機、F4EJ〈改〉が90機、F2が76機、対空ミサイル「パトリオット」4連装発射機135輌)が一手に担ってきた。同年にレーダーサイトや防空指令所が航空自衛隊に移管され、その際に結ばれた航空総隊司令官・松前未曽雄空将と、在日米空軍司令官R・W・バーンズ中将との協定で「日米の航空部隊は指揮系統を別個とする」と定められた。防空の指揮は日本側が行ない、米空軍はその指揮下に入らないのだから、防空には関わらない、という意味だ。沖縄でも72年の返還以後は自衛隊が防空を担っている。嘉手納の米空軍の戦闘機は沖縄返還後は交代で韓国の烏山基地に派遣され、韓国の防空に当たっていた。だが在韓米空軍が86年に第7空軍として独立、それまで日本と韓国の米空軍を管轄していた第5空軍と別組織となって以後は韓国に行く機会も少なくなり、湾岸戦争(91年)後はイラク上空の哨戒飛行のため、トルコやサウジアラビアの基地に交代で展開していた。だがイラク軍は2003年のイラク戦争で潰滅し、その仕事も失った。中東に派遣しているなら米本国の基地に戻し、そこから出せばよいではないか、との質問が米議会で出たこともあるが、国防当局者の答弁は「日本にいれば基地の維持費を日本が負担するから、本国に居るより経費が節減できる」というものだった。 三沢のF16は84年に配備された。当時米軍はソ連との開戦と同時に、オホーツク海にひそむソ連の弾道ミサイル原潜を処理して米本土への核攻撃能力を削ぐ戦略を持っており、対潜哨戒機や水上艦のオホーツク海突入の妨げとなるエトロフ島やサハリンのソ連航空基地やレーダーを叩くためだった。現在、三沢のF16は敵のレーダー電波を捉えて発信源に向かうミサイル、「ハーム」を搭載し、敵の防空網を制圧することを専門として、中東などに派遣されることが多い。航空自衛隊の戦闘機は「ジャッジ・システム」(*1)で指揮されているが、日本にいる米軍戦闘機はその受信機を持っていない。日本防空の任務を帯びていないからだ。 在日米陸軍は2500人余しかおらず、大部分は補給、情報要員で、戦闘部隊は沖縄に特殊部隊1個大隊(約300人)がいただけだった。06年、嘉手納に「パトリオットPAC3」を持つ対空砲兵大隊(約600人)が新たに配備された。しかし特殊部隊は有事の際にはアジア各地に潜入して、情報収集、破壊工作を行なう部隊で、いまはフィリピンでイスラム・ゲリラ討伐を指導している。07年には神奈川県座間に米陸軍第1軍団の前方司令部が設けられ、米陸軍の東アジア重視のように言われたが、米陸軍は在韓米陸軍司令部を12年に廃止し、戦時の指揮権を韓国軍に委ねることとしており、東アジアに米陸軍司令部が全くなくなるのもまずいから、小型の軍団司令部の一部を日本に持ってきたもので、銀行が大支店を閉鎖する代わりに近所に出張所を設けたような形だ。在日米軍の情報要員の大半は通信傍受、解読を専門にするNSA(国家安全保障局)に属し、かつてはソ連の通信情報を主な対象としていたが、冷戦後は同盟国を含む他国政府や企業などの通信を傍受し、米国の経済競争力向上に役立てる
「エシュロン」も行なっている。<脚注>
*1 地上のレーダーなどが機影を探知すると、コンピュータで飛行計画などと照合、身許不明機だと最適の部隊に迎撃勧告を出し、発進した戦闘機に対し取るべき針路、高度、速力などを指示するシステム。米海兵隊は米海軍省に属する「海軍陸戦隊」で、今では海軍とは別の軍として、陸、海、空軍に次ぐ「第4の軍」とされるが、艦隊の編成上、沖縄の第3海兵遠征軍は米第7艦隊に属する「第79任務部隊」だから、小沢氏の説「米第7艦隊だけで十分」の中には海兵隊を含むとも言える。米海兵隊は3、4隻の揚陸艦に乗る「海兵遠征隊」(*2)を基本単位とし、戦乱や暴動、災害などの際の在外米国人の救出や上陸作戦の先鋒となるのが任務で、沖縄の防衛兵力でないことは言うまでもない。 小沢説は米軍再編の方向にも合致している。再編の基本的考えは、(1)冷戦時代に共産圏諸国の周辺に米軍を配置したが、いまや時代遅れで、固定的配置よりも柔軟な運用をめざす、(2)軽量部隊を急速に展開できるよう、陸軍は師団(約2万人)から旅団(約4000人)に編成を変え、装甲車輌も中型輸送機C130で運べる物とする、(3)重装備、弾薬、燃料等は「事前集積船」に積み待機させ、海外の補給拠点、倉庫は整理する、(4)在外兵力は極力地元との摩擦を減らすよう縮小し、7万人を本国へ戻す、などだ。 米空軍は10個「航空遠征軍」(AEF。*3)に改編し、うち2個AEFを即時出動可能にするとしている。鳩山首相が「有事駐留」を語った、として事大的な自民党や親米メディアは非難するが、米陸、空軍自体が有事駐留に向かっていることを知らないのだろう。
<脚注>
*2 歩兵1個大隊約800人、砲6門、装甲車20余輌、ヘリ20余機、垂直離着陸攻撃機「ハリアーⅡ」約6機から成る。
*3 戦闘機、爆撃機約90機、空中給油機、早期警戒機、電子戦機など40機から成る。
ドイツでは冷戦時代に米陸軍、空軍計24万人がいたが、今では5万人程度に減り、韓国では4万3000人が2万5000人になった。在韓米陸軍の主力、第2歩兵師団は戦闘部隊の半分約1万2000人を削減し、残る部隊も前線地域を離れ、大半はソウル南方約60㎞、西海岸の平沢に移る。ここには新港があり、烏山空軍基地にも近いから他地域への出動が容易なためだ。米軍が他国軍の指揮下に入ることはまずないから、戦時指揮権を韓国軍に委ねるのは、米軍が韓国で戦う事はまずない、との情勢判断があるためだ。米国にとっては、韓国に軍を置いたのは北朝鮮の背後にソ連、中国がいたためで、ソ連は崩壊、中国は市場経済化で米国と緊密になり、通常戦力では南が圧倒的に優勢という状態だから「南北関係は朝鮮半島のドメスティック問題」という認識が広がり、駐留兵力の削減、移転につながった。むしろ米国は北朝鮮よりも日本の核武装に対して警戒心を抱いている。北朝鮮の核開発について米国には「それに対抗して日本が核開発を始めれば、その経済や、技術力から、かつてのソ連をしのぐ脅威となる」との懸念が根強く、06年の第1回核実験の直後、当時のC・ライス米国務長官は急遽訪日し「核の傘」を強調して回った。「核の傘」は日本が米軍の駐留を認める見返りと言うより、NPT(核不拡散条約)から脱退せず、核武装をしないこととのバーター関係、とも言える。 米国はイラク戦争、アフガン戦争の失敗で、出口戦略を模索せざるをえず、年間1兆ドル以上の財政赤字が今後も続く中、在外兵力はさらに削減を迫られるだろう。だが米海軍の戦力は、仮に今後10年間1隻も建造できなかったとしても(それはありえないが)その間に退役する艦齢に達する艦を除いて、原子力空母10隻、戦略ミサイル原潜9隻、攻撃原潜(対艦船用)36隻、巡洋艦16隻、駆逐艦64隻、揚陸艦27隻が10年後の姿であり、装備、訓練など質の高さとあいまって、全世界の他の海軍が束になってもかなわない実力を保ち続ける。海外市場と輸入資源への依存度がさらに高まる中国は、海洋を支配する米国との協調を一層強めることになろう。米海軍と敵対して海上通商路を守ることは不可能であるだけでなく、それにより米国市場を失い、外国企業が中国から引き揚げ、米国債や投資など100兆円を超える在米資産が凍結されては元も子もなくなる。 米海軍の世界的制海権確保のためには、太平洋の対岸にある横須賀、佐世保の両港と岩国の海軍航空隊基地は不可欠で、ハワイ、グアムには艦船の修理、補給の産業基盤がなく、西太平洋、インド洋での艦隊の行動が制限される。これらの事情を考えれば、小沢氏の「米国の極東でのプレゼンスは第7艦隊だけで十分」との説を非難した人々は自らの無知を暴露したと言うしかない。